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「流動体について」楽曲分析

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小沢健二の「復活」シングル「流動体について」を作曲の観点から分析していきます。

 

初めて聴いたときのこの曲の印象は「オザケンが帰ってきた」です。

それは「ある光」の後にリリースした曲達が「オザケン節」ではなかったからでしょう。

 

メディアにオザケンが帰ってきたのは大きいですが、それだけではないです。

この「流動体について」は多くのファンが待ち望んでいた「オザケン節」的曲だから。

小沢健二復活というより「オザケン復活」という印象が強く、当時のファンが心を踊らせているのです。

 

オザケン節とは?■

 

1.ループ

彼らしさのポイントはループです。

今回の「流動体について」はまさにこれです。

以前の曲で言うと「ローラースケート・パーク」「ラブリー」「ドアをノックするのは誰だ?」「愛し愛されて生きるのさ」「ある光」等、4つ程のコード進行で何度も何度も同じモチーフをループさせる曲がいくつもあります。

歌詞で伝えたいことが沢山あるということと、彼のブラックミュージック好きを考えると両方を上手く満たせるやり方だと思います。

※ここでのブラックミュージックの解釈は何度も同じモチーフをループさせ、気持良くなれるような音楽

 

2.転調

ループと一度程度の展開で構成されている曲もあります。

しかし転調を入れて曲の風景を変えることで、転調した部分の歌詞をより際立たせるという手法を使うこともあります。

 

「ドアをノックするのは誰だ?」

ー夏にもぎとったオリーブ 秋に読みあったストーリーー

 

「さよならなんて云えないよ(美しさ)」

ー左へカーブを曲がると 光る海が見えてくるー

 

「流動体について」

ー意思は言葉を変え 言葉は都市を変えてゆくー

 

転調について、わかりやすい曲と「流動体について」を比べてみました。

「ドアをノックするのは誰だ?」は転調することで風景をより綺麗に描写しています。

「さよならなんて云えないよ(美しさ)」に関してはファンの方ならば言わずもがな。

タモリさんがとても素晴らしいと称賛した部分「僕は思う!この瞬間は続くと!いつまでも」という名台詞に繋がります。

 

「流動体について」の場合は

1回目⇒意思は言葉を変え

2回目⇒言葉は都市を変えてゆく

3回目⇒躍動する流動体

4回目⇒数学的美的に炸裂する蜃気楼

と四回も連続で転調していきます。

ここで不思議な印象を受けるかと思いますが、転調の連続がこの絶妙な浮遊感をだし、大切な歌詞をより鮮明にしているのです。

上手過ぎます。

 

3.サビの半音上転調

「強い気持ち・強い愛」「それはちょっと」「戦場のボーイズ・ライフ」「夢が夢なら」等、かなり多いです。

サビを半音上転調で何度も繰り返し、曲を盛り上げる。

JPopによくある手法ですが、言葉を大切にし、モチーフを繰り返すことが多い彼の曲ではより活きてくるやり方だと思います。

「流動体について」は一、二回目のサビ「もしも間違いに気が付く~」はそのままのキーで歌っています。

その後前述した「意思は言葉を変え~」の転調の連続が入り、「彗星のように昇り~」を経て「それが 夜の芝生の上に舞い降りる」に到達します。

この「夜の芝生」の部分での高揚感。これは半音上転調が作っていると言えます。

 

更に恐ろしいのは畳みかけるの様にその後にも連続転調、それを経てサビ半音上転調とどんどんキーが上がっていくのです。

最初AだったキーがBで終わるということは鍵盤で言うと2つ分キーが上がったということ。

カラオケで+-0で歌ってるときに友達が悪戯して#2にしてきたような状態になります。

だから終盤のオザケンのファルセット(裏声)が心配になるのですね(笑)

僕はめっちゃ好きです。これこそエモい。

 

■新しいエッセンス■

 

ここまでの3つの「オザケン要素」に加え新しいエッセンスも入っています。

個人的にはこれがこの曲を所謂「スルメ曲」にしている部分でもあると思っています。

 

それは「終わらせない」こと。

 

ー広げた地下鉄の地図を隅まで見てみるけどー

このセンテンスの最後部分「るーうけどー」。

ここでも一瞬転調して曲を終わらせない方向へもっていってるのです。

 

更には、

ー宇宙の中で良いことを決意するくらいー

ここ。

メロディだけ聞くと終わってるんです。

終止音といって曲が終わった感じのする音にメロディは落ちています。

しかし終わっているように聞こえない。

ここも転調させることで違うキーの違う音に落ちたように、メロディを聞こえさせるということで「終わらせない」演出をしているのです

 

この「終わらせない」という新しいエッセンスがいつもの「オザケン節」に加わり、より疾走感ある曲に仕上がっています。

そして、忘れてはならないのはストリングス(バイオリン、ヴィオラ、チェロ)のアレンジを「LIFE」の時と同じく服部隆之さんが担当していること。

そこもオザケンぽさが出ている要因でしょう。

他にもコーラスの入れ方が~とか楽器のチョイス等様々な要素はありますが、一作曲家目線で気になったことを記事にしました。

 

 ※合わせて歌詞解釈もどうぞ

papapapapuffy1997.hatenablog.com

 

※「流動体について」コード進行はこちら

papapapapuffy1997.hatenablog.com